インプロのショーを宣伝すること

インプロのショーを宣伝することについて、正直言えば以前はあまり気の進まない自分がいた。その時の自分の心の声を言語化するとこんな感じだろうか。

「いやまぁ面白いことは面白いとは思うけど、うちらはまだまだインプロうまくないからなぁ。ま、もっとうまくなったら宣伝もできるようになるかな。あ、あとインプロってうまくいったりいかなかったりするから根本的に宣伝ってしづらいよねぇ。」

……うん、けっこう正確だと思う(笑)

とまぁこんな風に思っていたのだけど、最近はわりと普通に宣伝ができるようになった。そしてそれはなぜかと考えると、自分もだいぶインプロがうまくなったから、ではなく、そもそもインプロというものをうまいかどうかで見なくなったからだと思う。そしてインプロのショーをするということを、うまいものを見せることではなく、その時の自分をぽんっと舞台の上に乗せることだとようやく納得できるようになってきたからだと思う。

キースの言葉で昔から好きなものに次の一節がある。(最初に知ったのはどみんごの本からだったと思うけど、今ちょっと手元にないので純さんの本から。)

もしあなたが素晴らしいインプロバイザーなら、ステージに上がった時、ありのままでいてください。普通でいてください。そしたらあなたは、素晴らしいインプロバイザーでいられます。もし、あなたがヒドいインプロバイザーなら、ステージに上がって素晴らしいインプロバイザーのフリをしてもしょうがないのです。(『キース・ジョンストンのインプロ』p.32-p.33)

僕は自分のインプロは相変わらずまだまだだなぁと思っているけれど、自分を罰したところで何かが好転するわけでもないので、「ま、そういう自分を舞台の上に乗せてみよう」という感じでショーをしていきたいなと思っている。

インプロに限らず、自分は自分であるということからしか物事はスタートしないし、むしろそれがゴールだと言える、と最近は考えている。

そしてそんな風に考えるようになったら、昔のように気負わずに普通に宣伝ができるようになった。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter