中学校でインプロショーをしてきました

先週の金曜日は日野さんのお誘いで、日野さんの母校である静岡の中学校でインプロショーをしてきた。メンバーは日野さん&即興実験学校のゆみいちゃん&SAL-MANEのしゅうへいと僕、というかなり珍しい4人組。この中学校はどみんごや日野さんの縁からインプロに積極的で、今回ショーを見た二年生は既に3回のワークショップを受けていた。

生徒にとっては初めて見るインプロショー&この4人でやるのは初めてのインプロショーということで、今回はゲームを中心とした見やすい&やりやすい構成のショーにしようということで本番に望んだ。しかし、結果としてその見込みはだいぶ実態とずれていたように思う。

印象的だったのはショーの最初にカテゴリーダイとストーリーダイをやった時だった。カテゴリーダイはMCから指された人がお題にそって答えを言い(例えばお題が「くだもの」だったら「りんご」のように)、間違えたり詰まったりしたらみんなから「ダーイ!」と言われるゲーム。ストーリーダイはそれのストーリー版で、MCから指された人がその間ストーリーを話し、話が変になったり詰まったりしたら同じくみんなから「ダーイ!」と言われるゲーム。

僕の中ではこのふたつのゲームはどちらも「失敗を楽しむ」系のゲームで、それほど違いは無いと思っていたのだけど、この日はそうではなかった。カテゴリーダイで失敗したときはみんなで盛り上がっていたけれど、ストーリーダイで失敗したときは盛り上がるよりも「あれ?話の続きは?」という空気になっていた。

その次には短く盛り上がる系のシーンをやってみたのだけど、やっぱり「あれ?続きは?」という反応になったので、次のステータスを使ったシーンはちょっとじっくりとやってみることにした。これは当初はそんなに長くやる予定ではなかったのだけど、シーンの展開自体もストーリー性のあるものになったので、途中で終わらせず「これで終わりだな」という実感があるところまで続けてみた。その時は生徒がすごく満足しているという空気を感じた。

「お話が始まったら続きが気になる」――言葉にすると本当に当たり前のことだけど、この日のショーはこのことに改めて気づかされた。

お客さんはインプロを見ている時に普通に続きを想像しながら見ている。しかし舞台にいる役者はその感覚を失ってしまい、何かをしなきゃいけないと思ったり、反対に逃げ出すようにすぐに終わってしまう。今回のショーはそういうことを改めて感じる機会になった。

もちろんお客さんは普通に想像しているからといって、舞台に上がったらインプロができるかといったらそういうわけではない。今回のショーでは生徒を何度か舞台に上げたけれど、客席にいるときはうるさいくらい元気な子でも舞台ではやっぱり固まっていた。また、恐怖の問題とは別に、想像している「何か」を具体的にするには瞑想的な技術が必要になる(「見る」技術については最近研究が進んでいるのだけど、これについてはまたいつか)。

しかし、インプロをやると決めたからにはこれらを言い訳にしてもしょうがない。想像する力は普通にあるのだから、それを信じて飛び込んでみるしかない。それでうまくいかなくなったら潔く失敗を認めればいい。そこに飛び込まずに失敗しないようにしたり、失敗することを前提にした失敗をしても小さくまとまるだけである。今回のショーはインプロバイザーとしてそんなことを思った。

1985年横浜生まれ。東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において300回を超えるワークショップを開催している。2017年にはアメリカのサンフランシスコにあるインプロシアターBATSにてワークショップおよびショーケースに参加。またアメリカのインプロの本場であるシカゴにも行き、海外のインプロ文化にも触れる。 →Twitter